絵本と子育て [167KB]

3.集団への絵本の読み聞かせ

(1)保育園や幼稚園での読み聞かせ

 いろいろな本に書かれているので割愛します。
 

(2)育児・子育てサークルでの絵本の読み聞かせ

 絵本は、基本的には家庭で子どもが一対一で親から読んでもらうために作られました。その点、最初から集団に読んであげるように作られた紙芝居とは成りたちが全く違います。だから、絵本は、まず家庭で親と一対一でしっかり聞けるようになることが大切です。それが、家庭での読み聞かせのしつけとも言えるでしょう。
 
 集団で絵本の読み聞かせを聞くためには、家庭にはない集団の中で生活すると言うルールが加わるので簡単ではありません。
 
 子どもは家庭で一人遊びをします。2歳ごろまでには一人遊びが20分ぐらいもできるほど遊びが上手になります。そして2歳前後からは、どんなに親が遊び上手でも子どもは満足しなくなります。お友達と遊びたくなったからです。
 それで親は育児・子育てサークルや子どもがたくさん遊んでいる場所に子どもを連れ出すことになります。でも、親の期待に反して子どもはなかなかお友達と遊んでくれません。周りの子どもの遊びをじっと見守る時期が随分長く続くからです。この「見る」遊びは子どもにとってとても大切な発達です。
 その場では見るだけでも、家に帰ると、見てきたことをそのままやったりします。遅延模倣と言う価値の高い遊びです。
 やがて、子どもの中にいることに慣れてきますが、親がいるから子どもは安心しているのです。少し子どもが集団の中で遊び始めると、もう親離れしてきたと誤解する親がいますが、子どもが十分場所に慣れ、子どもが何人もいる集団に慣れ、サークルの保育の流れにしっかり慣れるまで、親は子どもの安心の基盤なのです。
 
 

  絵本と子育て

 集団で聞く絵本の読み聞かせには、このように家庭にはない要素が付随してく
るので、子どもだけでなく親も集団に慣
れていく子どもの発達の概略を知り、そ
れに合わせて行く必要があります。
  

 

○固定的な集団
 これは、メンバーがいつも同じサークルです。親と子どもの顔ぶれが同じ
なので子どもは慣れるに従って集団の
ルールに従って徐々に行動できるよう
になります。絵本の読み聞かせも、少
しずつ結実を見ることでしょう。
 

○変動する集団
 これは、絵本の読み聞かせは定期に行われているのですが、集まる子どもはいつも同じではなく変動する集団です。固定した時間に読み聞かせしても、途中で入ってきたり、読み聞かせの途中からいなくなったりする子どももいるでしょう。この場合は、絵本の読み聞かせを楽しめる子もいれば、途中で飽きたり、子どもの出入りがあるので落ち着かない雰囲気で聞く子もいるでしょう。
 それぞれ事情があってこのような読み聞かせになっているのですから、できるだけマイナスの部分を少なくするために「室内では静かにしましょう」と貼紙をしたり、出入り口の扉のところには係が常駐して、ドアの開け閉めは特に静かに行うなどの工夫も必要でしょう。

 

(3)集団への読み聞かせの注意事項

 見えることが大切です。一番前の子どもが下から絵本を見上げていたり、前の母親の陰になって後ろの子どもが見えにくそうにしていたりすることが時々見られます。
 
 また、集団に読む場合は、ある程度大きい声で読む必要があります。読み手が女性の場合には大変やさしい声で読む方もいて、後ろの子どもたちが良く聞こえずうるさくなった例もあります。

 個人に読み聞かせする場合は、その子の好みを考えて絵本の選択をすることがありますが、集団に読み聞かせする場合には、どうしても楽しい劇的な動きのある絵本が用意されることになるでしょう。

 また、プロット(ヒント)のある絵本(「どろんこハリー」や「きょうはなんのひ」など)は、3歳未満児が多い育児・子育てサークルでの読み聞かせにはむかないことを知っておきましょう。この年齢の子どもたちは、言葉の理解の発達がまだプロットを理解することも難しいですし、プロットがある楽しさを発見することは困難だからです。

 絵本の読み聞かせはその核の一つとなるものですが、乳幼児用の紙芝居、簡単なパネルシアター、テーブル人形芝居なども活用しましょう。特に、サークルの遊びが終わって解散する前に、次回の楽しい活動の予告をすると、親子の期待はなお高まり、サークルへの定着がより強固なものになるでしょう。