1. 総論その1
~おやすみ前の絵本の読み聞かせの習慣化~
絵本の読み聞かせは、1970年代の岩波や福音館を中心としたいわゆる絵本のブームの時代から現代にいたるまで、家庭でも保育の現場でも育児・子育てサークル等でも営々と続けられて来ています。そして、少なくとも絵本の読み聞かせに関わる人たちは、絵本が子どもに与える良い影響を十分把握しています。
しかし、TVやVTRなどの普及によりそれらの視聴が全く一般的になり、特に家庭での育児・子育ての中にかなり定着してきていることは周知の事実です。したがって、家庭における絵本の読み聞かせは、読み聞かせの仕方も読み聞かせの時間の長さも変化してきています。例えば、TVをつけたままで絵本の読み聞かせをするとか、子どもがTVを見飽きて絵本を持ってきたときにだけ何となく読んであげるなどがその例です。
ここで、育児・子育てに関わる私たちは、まず根本的なことから絵本の読み聞かせに関する現代の環境を分析して考えなければなりません。第一に、TV中心の家庭環境です。この事については、すでに2004年4月に日本小児科医会から「子どもとメディア」の問題に対する五項目の具体的提言が出されていますが、特に最初の二項目が注目されます。
1)2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう。
2)授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴はやめましょう。
2歳までは、言葉の発達の基礎づくりの時期で、親密な親子関係(最良の親子のコミュニケーション<眼差しで話す、音声で話す、指差しで話す、表情で話す、ジェスチャーで話す、片言で話す>の確立)と親の生(なま)の声の語りかけが最重要なのです。コミュニケーションは、親子のやりとりですが、TVはやり取りが全くできません。特に、眼差しを合わせて話すというコミュニケーションの基本が成立しにくい場合も考えられます。筆者の育児・子育て相談(註:秋田市子ども未来センターの育児・子育て相談)の臨床では、3歳までの言葉の遅れの相談の半数以上の子どもにTVやVTRの過視聴による影響が見られます。
このことを合わせ考えると、家庭での絵本の読み聞かせの指導は、TVやVTRの管理(見ようとするときは見るが、見ないときは消す。見る時間はできるだけ少なくする)から始める必要があります。(絵本について話すときには、必ずTVやVTRの管理にも触れることが必要です。)
また、本来的に考えると、絵本は子どもが読んで欲しくて親に持ってきたときに一対一で読むのが普通です。しかし、TVやVTRの影響に負けないためには、絵本を読んでもらう楽しさを、継続的に、毎日しっかり時間を設定して行う必要があります。これは、子どもが朝起きて顔を洗い、ご飯を食べ終わると歯を磨くのと同じように、日常身に着いたことになるまでしっかり習慣化されるように頑固に執拗に続ける必要があります。これは、親のやる気と根気が必要なのです。
そのような時間の設定は近年増加している共働きの家庭では難しいという反論もあります。だから、この考え方は、家庭における絵本の読み聞かせの基本だと考えましょう。各家庭に合わせて、できる範囲で実行して行きましょう。
しかし、毎日必ず実行できる読み聞かせの時間があります。それは、子どもの就寝前の15分間です。子どもがパジャマに着替えたら、お好みの絵本を2~3冊持ってきて、パパやママに読んでもらうのです。これを習慣づけることです。この絵本の読み聞かせの時間の設定は、ただ寝る前に絵本を読んであげましょうと言うことではありません。子どもと親の対応には、一日の中でいろいろな葛藤があることでしょう。しかし、子どもの就寝の前に、葛藤を全て洗い流し、寝る前の15分間は、毎日最高に平和な親子の愛の交流の時間として一日の締めくくりをしましょうという考えです。
『就寝前の絵本の読み聞かせの習慣化』を実行した家族を、過去に何十組も知っています。そして、この絵本の読み聞かせを通して得た親子のつながりの深化の素晴らしさは皆が経験済みです。
『就寝前の絵本の読み聞かせの習慣化』を実行した家族を、過去に何十組も知っています。そして、この絵本の読み聞かせを通して得た親子のつながりの深化の素晴らしさは皆が経験済みです。
~つづく