絵本と子育て [167KB]

6.言葉遊びの絵本の活用

 言葉遊びの絵本は、近年、たくさん出版されるようになりました。そして、音声言語の完成した子どもたち(主として3歳以上児)が読み聞かせてもらって楽しんでいるようです。しかし、筆者はこれを言語障害の臨床(主として構音障害<発音の障害>)に導入し、この種の絵本の読み聞かせが一定の効果をもたらす事を確認しています。

 言葉は意味と発音から成り立っていますが、この子らは知恵づきは普通なので言葉の意味の把握は問題ないのですが、何らかの事情で発音の発達が聞き取りも話す事も遅れてしまっているのです。有名なのは、カ行がタ行になる障害(「おかあさんがおたあさん」となる)やサ行がタ行になる(「おかあさんがおかあたん」になる)障害が知られています。

 発音の障害の改善のためには、幼児の言葉の教室が良く知られていますが、発音の訓練は、3歳代まではあまり効果がありません。自分の発音を自分の耳で聞いても音は直ぐに消えてしまうので、正しい音と間違っている音と比較することができず、自分が間違っていることが分からないからです。

 言葉の音の部分に興味を持ち始めるのはおおよそ4歳からで、音声言語が完成し、言葉の興味は自然に、言葉の仕組みやリズム、意味の違い、語呂の面白さなどに向かうからです。この興味と関心の広がりを、言葉遊びの絵本は援助してくれるのです。子どもが自然に自分で発音を治していくことを『自己修正』といいますが、言葉遊びの絵本は子どもの興味と関心を言葉の発音の部分に自然に向けてくれる点で大きな働きがあります。

絵本と子育て

子どもたちが、幼稚園や保育園で遊ぶ言葉遊びは、大よそ次のようになります。

No 項目 具体例
頭音言葉遊び あひるの,いぬの,うさぎのなど
尾音言葉遊び あひるの,いぬの,うさぎのなど
しりとり -な-し-か-めが-ねずなど
頭字集め のつくものは,のつくものは,のつくものは
言葉の音の数 一音節――手,目,など
二音節――うま,うし,しか,など
三音節――かえる,すずめ,めだかなど
四音節――にわとり,ひまわり,てぶくろなど
五音節――こいのぼり,かぶとむしなど
ひっくり返り言葉 お客をたくさん乗せて走る車―スバスバ(バス)
お水を飲む時,使うもの―プッコ、プッコ(コップ)
コケコッコ-と鳴く鳥―リトワニリトワニ(にわとり)

上のような言葉遊びに興味を持たせながら、下記のような絵本を図書館から借りてもらい家庭で読み聞かせていきます。

絵本の名称・著者・出版社
へへののもへじ 高梨章 作
林明子 絵
福音館
めのまどあけろ 谷川俊太郎 文
長新太 絵
福音館
これはおひさま 谷川俊太郎 文
大橋歩 絵
福音館
ことばあそびうた 谷川俊太郎 詩
瀬川靖男 絵
福音館
ことばあそびうた また 谷川俊太郎 詩
瀬川靖男 絵
福音館
それほんとう? 松岡享子 作
長新太 絵
福音館
ままです すきです すてきです  谷川俊太郎 文
タイガ-立石 絵
福音館
そしたらそしたら 谷川俊太郎 文
柚木沙弥郎 絵
福音館
これはのみのぴこ 谷川俊太郎 作
和田誠 絵
サンリ-ド
絵本の名称・著者・出版社
せんべせんべやけた 小林えみ 案
ましませてこ 絵
こぐま社
さよならさんかく わかやまけん こぐま社
わっこおばちゃんの しりとりあそび 佐藤わきこ作 童心社
ころころラッコ こラッコだっこ 石津ちひろ 文
枝リュウジ 絵
BL出版
トントンどんどん  中川ひろたか 文
村上康成 絵
PHP研究所
あいうえおうさま 寺村輝夫 文
和歌山静子 絵
理論社
わにがわになる 多田ヒロシ こぐま社
ぶたたぬききつねねこ 馬場のぼる こぐま社

7.結語

 以上、「絵本と子育て」を概観してきました。

 現代では、家庭の環境をまず整え(TVやVTR等を的確に管理すること)、親も子どもも絵本を読み聞かせたり、読み聞かせられたりすることを習慣化する必要があることが大よそ理解できたと思います。この継続的な方法を除いて、親子の絆を深める方法は簡単には見当たりません。

 許されることであれば、子育てに関係する者を総動員して、家庭での絵本の読み聞かせの習慣化に取り組む時が、今来ていると思います。

おわり