絵本と子育て

4.絵本の楽しみ・絵本の喜び

(2)その2~ある女の子の記録(3歳3ヵ月から4歳11ヵ月まで)~

 このような子どもは、その後の絵本への興味がどのように広がるのでしょうか。記録をのぞいてみましょう。(一人の女の子の3歳3カ月から4歳11カ月までの記録です。)
 
1)3歳3ヵ月
 こどものとも(福音館)の年少版「おかあさんとおつかい」を母親から読んでもらい、8~9ページの絵を見て「でも おもちゃやさんでは、なにもかいませんでした。」と言う文を読んでもらったとき、絵本の文とは逆に、絵本の主人公のりょうちゃんがおもちゃ屋さんの方を指さし、母親の手を引っ張っている部分に注目し、女の子は、「(お母さんの手をりょうちゃんが引っ張っているのは)おもちゃを買いたかったからかもしれないね。」と言った。
 この頃、絵本を読んでもらうため、本を持って父親や母親のところを回って歩く。
 
2)3歳4ヵ月
 「おでかけのまえに」(福音館)を父親に読んでもらう。それぞれ主人公が失敗するページに来ると、顔をしかめて父親に合図をする。本当に絵本を楽しんでいる。
 
3)4歳0ヵ月
 『おばさん なにくれた ひがくれた』と言って、きゃっきゃっと笑う。これは、「へへののもへじ」(福音館)の22ページの文を思い出したものである。(アンダーラインは筆者)

絵本と子育て

  ぱぱと
  ぼく
  おふろに はいる
  たいるの おふろ
  ぱぱの せなかを
  あらって あげた
  ぱぱも せなかを
  あらって くれた
  くれた 
  ひがくれた 
 
4)4歳3ヵ月
 パンをトースターで焼いて、「パンが焼けた 日が暮れた」と言って笑っている。これも上記の絵本の言葉を思い出して楽しんでいるものと思われる。
 
5)4歳6ヵ月
 「ここ読んで」と言って、絵本の題を指さしながら絵本を持ってくる。文字に興味を持ってきたようだ。

 

6)4歳7ヵ月
 ゆうべ、絵本を読んでもらうと言っていたが眠ってしまった。朝、ぶすっとして起きて来て開口一番、『今晩は、必ず読んでもらうからね。』と言う。
 「ここ読んで」と言って、絵本の題を指さしながら絵本を持ってくることが続いている。題を読んであげて、「これ、Eちゃんの「え」だものね」と言うと、うなずいてにっこりする。
 夜、寝る時、『お母さん、今日は絶対に本を読んでもらうよ』と言う。ゆうべ、本を読んでもらうと言っていたが、『お母さんが忙しいから待ってね』と言われて、待っている間に眠ってしまい、今朝目を覚ましたとたんに、「あっ!ゆうべ、本読んでもらわなかった!」と言ってなかなか起きてこなかったとのこと。今もまた、「今日は、絶対に目を覚ましているからね」と、いきまいている。
 
7)4歳9ヵ月
 夜、寝る時、『お母さん、今日、ご本、読んでもらえますか』と聞いている。(寝ること)=(本を読んでもらうこと)となっているようである。
 この頃、絵本を見ながら、一人で、「空読み」をすることが多くなった。良く文字を読んでいる様子が見えるが、書いてある通りにではなく、思った通りに読んでいる。

 絵本を立てて右図のように並べ、お部屋を作って遊んでいる。全くひとりで工夫したと言う。床面にも同じ大きさの絵本を敷いて並べ、人形を寝かせ、布団代わりにハンカチをかけたり、茶碗やポット(いずれも玩具の物)を置いたりして工夫している。 

図1

 
 
8)4歳10ヵ月
 この頃、漫画を見るようになってきた。「怪物くん」や「どらえもん」の漫画を見てキャッキャッとわらったりする。今夜もそうだが、漫画の見開き2ページを母親に読んでもらっている。
 
9)4歳11ヵ月
 今晩、母親から読んでもらう絵本を選んでいる。何度も読んでもらったのに、「これも面白い」「これも面白い」と読んでもらう絵本が増えるばかり。迷っている。

~つづく