いしゃがよい

 

 
 
 白と黒の毛皮に大きな体、愛くるしい表情、ササが大好物…ときたら、もうお分かりですね。今回はジャイアントパンダが主人公の1冊を紹介します。
 中国の高山地帯をほうふつとさせる山の中が舞台です。「ファ ファ」と鳴いていた赤ちゃんパンダをファンファンと名付けて育てることにしたエンさん。1人と1頭の心温まる交流が始まります。
 体が弱いファンファンを、エンさんは自転車の後ろに乗せてお医者さんへ。雨の日も雪の日も、ひと山ふた山と越えて行きます。帰り道では決まって、子守歌を歌って聴かせました。
 長い年月が過ぎ、おじいさんになったエンさんは体調が優れません。今度はファンファンがエンさんを連れてお医者さんへ。自分の体の何倍も大きくなったファンファンの背中につかまり、涙がこみ上げるエンさん。その描写から気持ちが痛いほど伝わり、ぐっときます。
 穏やかな日常が丁寧に描かれ、絵の世界観も相まってすてきな1冊です。ところで、食肉目クマ科に属するジャイアントパンダは中国語では「大熊猫」と表記します。大人になると体重は100~150キロにもなるそう。それを想像しながら読んでみると、また違った面白さがあるかもしれませんね。

 加藤香澄(秋田市河辺保育所)

(令和7年3月15日秋田魁新報掲載)

2024あふれちゃんのえほんばこへ進む

対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 さくら せかい・作
出版社 福音館書店