もりのひなまつり

 

 
 
 森の近くの家の蔵に住むねずみばあさんに、のねずみこどもかいからの手紙が届くところから、物語が始まります。手紙には、もりのひなまつりをしたいです、とありました。
 箱の中で聞いていたおひなさまは「まいりましょう」。みんなで森へ出かける、冒険にも似た展開がこの絵本の醍醐味。ワクワクドキドキが始まります。
 森に着くと切り株にひな壇飾りのように並び、五人囃子の笛太鼓に合わせ、三人官女が歌い、お内裏さまが踊ります。森の仲間たちの幸せを願い、祝う様子がほほ笑ましいです。丁寧な場面構成やかわいいしぐさ、表情に見入ってしまいます。
 楽しい時間はあっという間に過ぎ、雪が降り始めます。こねずみたちとおひなさまが大慌てで家へと急ぐ場面は臨場感たっぷりで見応えがあります。
 何とか帰ったおひなさまの着物や髪は乱れ、顔は泥だらけ。こんなに汚くては捨てられてしまうかもと心配します。でも、ねずみばあさんが手際良くお直しして箱の中へ。間に合って良かった、という声も読み手から聞こえてきそうです。おひなさまと一緒に森へ出かけたくなる、夢にあふれたお話です。

 
 仁村由美子(聖霊女子短期大学付属幼稚園・保育園園長)

(令和7年2月22日秋田魁新報掲載)

 

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対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 こいで やすこ・作
出版社 福音館書店