桃から生まれたももたろうが、イヌ、サル、キジを引き連れて鬼退治するおなじみの昔話です。昔話は同じお話をベースにしてたくさんの絵本が出版されていますが、この絵本は味わい深い文章と絵が魅力的。一度は手にとっていただきたい作品です。
「あるひ、おばあさんがかわでせんたくをしていると、かわかみから、ももがつんぶくかんぶくつんぶくかんぶくとながれてきました」。リズミカルでなんて楽しい文章なのでしょう。
桃が割れて生まれたももたろうの産声は「ほおげあほおげあ」。とても元気そうな様子が、面白さも含んだ言葉で伝わってきます。
「スーホの白い馬」なども手掛けた赤羽末吉さんによる絵も素晴らしいです。りりしいももたろうはもちろん、独特のタッチで描かれた人物たちやお供の動物たちは、躍動感にあふれ、生き生きとしています。
加えて、落ち着いた和風の配色が昔話の世界観にぴったりで、一気に引き込まれます。
驚くことに、この作品は1965年に刊行されたものです。今から60年近くも前ですが、大人も子どもも夢中にさせる魅力を放ち続けている名作です。
柴田麻衣子(横手市職員・司書)
(令和6年8月24日秋田魁新報掲載)
対象年齢 | 5歳ぐらいから |
---|---|
作者名等 | 松居 直・文、赤羽 末吉・画 |
出版社 | 福音館書店 |