うろおぼえ一家のおかいもの

 
 
 
 ここは森の中。木の家に住むあひる一家の朝の会話が、ややこしいことになっています。「あれ、なんで はやおきしたんだっけ?」「そうだ、おかいものだよ!」。お母さんは留守番。お父さんと、きょうだい3羽が買い物に出かけます。
 一家の特徴は「うろおぼえ」。何を買うのか確かではない中、出会った動物たちとの会話をヒントに買い物を進めます。 
 「しかくいもの」を、と豆腐を買いますが、お母さんが手作りするはず。「おもいもの」で行き着いたのは石ですが、お母さんは欲しくないはず。ページをめくるたびに展開が変わり、どこに着地するか、ワクワクします。
 結局、だんボールばこにアイスを山ほど買い込みました。こっそり付いてきたたぬきの登場で、もうひと展開ありそうです。
 帰宅後、たくさんのアイスを食べる一家。「うちにれいぞうこがあれば、アイスをひやしておけるのにね」。これが欲しいものだったのかもしれません。一家が次の買い物までに覚えているか心配になりそうです。
 最後のページには、楽しそうにおしゃべりする家族の影が映し出されます。お母さんを思って買い物をする家族の「お母さん大好き」にあふれた温かな物語です。

 



仁村由美子(聖霊女子短期大学付属幼稚園・保育園園長)

(令和6年8月10日秋田魁新報掲載)

 

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対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 出口 かずみ・作
出版社 理論社