そらいろ男爵

 男爵はいつものんびり、飛行機に乗って空を散歩するのが好きでした。空と見分けがつかないように青色に塗られた飛行機は、男爵が自分で作りました。
 ところがある日、男爵の国で戦争が始まってしまいます。男爵も敵をやっつけるために戦わなくてはなりません。武器の砲弾になるものは…さてと…。いいものがありました。男爵の図書室にあるたくさんの分厚い本!! 飛行機に乗って、分厚い本を落として敵を足止めしました。
 でも、戦争は終わりませんでした。最後に残った分厚い本はロシアの小説。敵に当たらなかったけれども、それを敵の隊長が拾いました。隊長は小説に夢中になり、戦争はストップしたのです。
 男爵はさらにいいアイデアを思いつきました。男爵の大好きな本を、敵味方の陣地に投げ入れ、兵士の家族からの手紙もばらまき作戦。やがてとうとう、兵士たちは戦いをやめ、戦争は終わりました。
 あちこちで悲しい戦争が起こっています。本を読むと、考えたり、感じたり、想像したり、相手を思いやったりすることができます。誰もが戦争をやめたいと思うはずです。
 

 
 
佐藤 郁(鹿角市立花輪図書館)

(令和5年9月9日秋田魁新報掲載)

 

2023あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
 プールの季節がやってきました。皆さんは泳げますか? 泳げるようになりたい人は、ぜひこの絵本を読んでみてください。
 絵本によれば、イヌもネコもゾウもライオンも、みんな泳げます。だって体が水に浮くのですから。では、人間はどうでしょう? お風呂で試してみましょう。力を抜くと、手も足も浮かんできますね。しかも、動物も人間も、体の中に「うきぶくろ」があります。息をいっぱい吸うと、肺の中の空気が「うきぶくろ」の働きをして、体が水に浮きやすくなるのです。
 「はい、そうですね」と泳げるようになれたら簡単ですが、なかなかそうはいきません。でも大丈夫。絵本ではちゃんと、プールでの練習方法も教えてくれます。
 初めに、ゆっくりと歩く。それから走る、浮かぶ。おっとその前に、水のかけ合いっこで、顔がぬれても平気になろう。次は水の中で息を吐く練習。水の中で目を開けられるかな? 体を丸めると、ほら、浮いた。それから手を持ってもらって、横になる。そして足をばたばたさせると、前に進む。泳げるぞ。
 あとはプールで試してみるだけですね。どうぞ皆さん、良い夏をお過ごしください。
 ぼくの部屋には恐竜がいっぱい。フィギュアに布団、枕も恐竜。寝る前に、お母さんが恐竜の絵本を読んでくれたけれど、途中で赤ちゃんの泣き声が聞こえて出て行っちゃった。つまらないから、布団にもぐって、猫のミーコとほら穴探検に出発だ。
 ようやく出口が見えてきました。遠くからドドドドドド…とすごい数の恐竜たちがやって来ます。肉食竜に追われた草食竜のようです。ぼくは逃げ遅れたランベオサウルスの小さな子どもを見つけ、助けます。小さいぼくたちと大きな肉食竜の対比が、怖さを引き立てます。ランベオサウルスの子どもはお母さんとはぐれたようです。ぼくとミーコは一緒にお母さんを探してあげることにしました。
 暗い夜なのにいろんな恐竜がいて、ぼくにはうれしい出会いです。プテラノドンやパラサウロロフスを頼って湖を渡り、お母さんと再会します。でもその途端、火山が爆発。ぼくとミーコはほら穴に潜り込み、布団に戻りました。
 絵本にはたくさんの恐竜のスケッチが並んでいます。当てっこや「恐竜あるある」に花が咲きそうですね。恐竜と出会い、友達にもなれるわくわくを味わってみませんか? 
 
仁村由美子(聖霊女子短期大学付属幼稚園・保育園)
対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 ジル・ボム・文、ティエリー・デデュー・絵
出版社 主婦の友社