はやくちまちしょうてんがい はやくちはやあるきたいかい

 しりとりなどの言葉遊びには、上から読んでも下から読んでも同じ音になる回文や、問いかけから答えを導き出すなぞなぞなど、さまざまな種類があります。今回の絵本のテーマは早口言葉。こちらも誰でも知っている言葉遊びの一つですね。
 舞台は、商店街で開催される早口早歩き大会です。参加者たちがそれぞれに早口言葉を唱えながらゴールを目指します。おすし屋さんの前では選手が「おしすぎ おしずし おすすめ おすし」。店内では、お客もつぶやきます。「いかから くるか いくらから くるか くるくるずし」
 漫画のように吹き出しが使われていたり、看板の文字や観客の声援が早口言葉になっていたりと、眺めても楽しい絵本です。見開きで一つの場面になっていて、どの場面にも10種類以上の早口言葉があります。スタートからゴールまで読み応えたっぷりです。
 今回は絵本という形ですが、言葉遊びの本来の素晴らしさは、特別な道具を必要としないところでもあります。遊びの中で育まれるものは多くあります。まずは声に出して読むことで、日本語の面白さを感じてみてほしいです。
 

柴田 麻衣子( 横手市職員・司書 )

(令和5年6月24日秋田魁新報掲載)

 

2023あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 林 木林・作、内田 かずひろ・絵
出版社 偕成社