おとん

 「なんやなあ。うちのおとんは、なんでこうだらだらしとるんやろか」「ひょっとして、パパとかよんだらすこしはかっこつけるんちゃうか?」
 「パパ」「ちちうえ」「おとっつあん」など子どもの呼びかけに、「おとん」はずっこけたり、ちょんまげ姿や江戸っ子になりきったりします。イタリア語やスワヒリ語も飛び出しますが、しっくりくるのはやっぱり…♪ 
 テンポが良い関西弁のかけ合いが心地よく、読み進めるほどに心ぬぐだまる一冊。想像力豊かな子どもと、子どもとの時間を楽しむおとん。2人の生き生きとした表情にもご注目を! 親子の関わり方のヒントがあるかもしれません。
 皆さんはお父さんのことをどう呼んでいましたか? お父さんになってからはどう呼ばれていますか? 生まれた時代や地域により違うかもしれませんね。作者の平田さんご夫妻は方言読みも大切にされています。ぜひ秋田弁で挑戦っこしてみでけれすな~。
 一人二役はもちろん、お子さんと一緒に役割を決めたり変えたりしながら読み合うのもおすすめです!
 

髙橋 寛光( あきたパパ絵本チーム「パパコラボ」 )

(令和5年6月17日秋田魁新報掲載)

 

2023あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 平田昌広・作、平田景・絵
出版社 大日本図書