ぎゅう ぎゅう ぎゅう

 この絵本のテーマはスキンシップ。触れ合うことが一番の愛情表現。心まで「ぎゅう」となりますよ。赤ちゃんがお母さんにおててや体を「ぎゅう」と握ってもらう。絵本には、こんな日常が優しくかわいらしく描かれています。
 繰り返し出てくる「ぎゅう」のテンポが良く、お子さんの気持ちをぐっと引きつけられます。抱っこして読みながら、「ぎゅう」のたびにお子さんを抱きしめるのも楽しいですね。大切なのは、どちらも温かく幸せな気持ちになることです。
 赤ちゃん向けの絵本ですが、先日3歳過ぎの子どもたちに読み聞かせをしてみました。いつもの絵本とは異なる雰囲気の絵やお話に、じーっと見入っていました。「ぎゅう」の場面では目をキラキラさせて笑顔になり、そばにいるお友達同士でハグし合う姿に、こちらまでほっこりとしました。「スキンシップは年齢を問わずみんなが幸せになれるな」と思いました。
 絵本を読んだ後、お子さんが「ぎゅう」と抱きついてくれたり、さまざまなものを「ぎゅう」とする姿が見られたりするかもしれません。親子で親密な時間をつくれるはずです。心がぽかぽかと満たされるのを、ぜひ感じてみてくださいね。

佐竹 美緒( 秋田市河辺保育所 )

(令和5年5月20日秋田魁新報掲載)

 

2023あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 赤ちゃんから(0歳~ )
作者名等 おーなり由子・文、はたこうしろう・絵
出版社 講談社