れっしゃがとおります

 春のぽかぽか陽気で、お出かけやお外遊びが楽しくなりましたね。今回は、列車や乗客はもちろん、線路沿いで暮らす人たちや、列車の外の風景が描かれた絵本を紹介します。
 さあ、朝を迎えて駅の周りがにぎやかになってきましたよ♪
 リュックを背負った親子はどこに行くのかな? 待ち合わせしている人達は何の集まり? 一人一人の様子が細かく描かれているので、お子さんとの会話も弾みそう。赤ちゃんを抱っこするママとパパ、カメラを持った「撮り鉄」さんなど、気になる絵が満載です!
 ガッタン、ゴットンと列車が出発。街や自然を通り過ぎ、お客さんを乗り降りさせながら終点を目指します。線路の周りには、虫取り網を持った親子や仕事中の大人たちなど、いろいろな人がいます。広い田んぼや輝く川など、豊かな自然もあります。それぞれの会話や音は描かれていないけれど、聞こえてくる感じがして不思議です!
 絵本の中の誰かの生活や向かう先、列車の行き先を想像しながら読み進めるのもおすすめです。読む度に新たな発見があるはずです。出版社によると、品切れで重版未定とのことですが、図書館で読むことができます。さぁ、皆さんも楽しい旅にいってらっしゃい♪

髙橋 寛光( あきたパパ絵本チーム「パパコラボ」 )

(令和5年4月22日秋田魁新報掲載)

 

2023あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 岡本雄司・作
出版社 福音館書店