くまさん

 春になりました。森や野原で、緑の芽や花のつぼみが育っています。山では、きっとクマたちも目を覚ましていますね。 
 「くまさん」は、詩の絵本です。作者のまどさんは、子どもの本のノーベル賞と言われる国際アンデルセン賞を受賞した詩人で、「やぎさんゆうびん」「ぞうさん」などたくさんの作品があります。詩というと、大人はなんだか苦手だと思うかもしれません。でも小さいお子さんは、リズムのある言葉や繰り返しが大好きなので、詩と相性がいいと思います。
 お母さんと眠っていたこぐまは、春になって目を覚ましますが、自分が誰か忘れてしまっています。タンポポを見ながらぼんやり歩いていると、川に映る自分の顔とご対面。くるくる動く表情を見ていると、春が膨らんでいく感じがしますね。
 この詩を小学生に読むと、全員で大合唱になります。まどさんのリズミカルな言葉には、知らず知らず口ずさんでしまう力があるんですね。最近大きな声を出していない方は、ぜひ、この詩をお子さんと声を合わせて読んでみてください。体の中に春が芽生えたような気持ちになると思います。

遠藤 美弥子( おはなしの会「おはなしの扉」 )

(令和5年4月1日秋田魁新報掲載)

 

2023あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 赤ちゃんから(0歳~ )
作者名等 まど・みちお・詩、ましませつこ・絵
出版社 こぐま社