おさるとぼうしうり

 
  木の上で寝ている正装の男性、その木の根本に真っすぐ積み上げられた、たくさんの帽子。木の後ろから顔をのぞかせているのはおさるたち。さて、これはどんなお話でしょう。
  本を開くと、男性がたくさんの帽子をかぶって立っています。この人は、帽子を売る行商人。品物を頭に載せ、背筋をしゃんと伸ばして「ぼうし、ぼうし、ひとつ50えん!」と呼ばわって歩くのです。
  ある日大事件が起きます。ひと眠りしている間に、帽子が全部消えてしまったのです。一生懸命に探すと、木の上のたくさんの猿がそれぞれ帽子をかぶっているのに気づきました。
  さあ、帽子売りは困りました。何を言っても、猿は「ツー、ツー、ツー」と言いながら、帽子売りのまねをするばかりで、帽子を返してくれません。怒った帽子売りは、自分の帽子を地面に投げつけます。すると…?
  1940年代に米国で出版されたこの絵本は、日本では70年に出版され、長く愛されています。松岡享子先生の訳文はシンプルで、声に出すのも聞くのもとても心地いいリズム。一本の木の周りで繰り広げられる、あっと驚く物語は、絵本ならではの楽しさに満ちています。

遠藤美弥子(おはなしの会「おはなしの扉」)

(令和6年3月30日秋田魁新報掲載)

 

2023あふれちゃんのえほんばこへ進む

対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 エズフィール・スロボドキーナ・作・絵、まつおか きょうこ・訳
出版社 福音館書店