さまざまな絵本の力(2013年度マザーズ・タッチ文庫絵本選考委員 田丸美穂)

 絵本を読むとき、子どもたちは本当にいろいろな表情をみせてくれます。例えば、美味しいものがでてくれば手をのばし、怖いものがでてくれば全身に力を込め固唾を飲んで見守り、みんなで力をあわせるシーンでは労力惜しまず力を貸してあげます。

 子どもたちが絵本を楽しむときは真剣そのものです。目はキラキラ輝き、見開かれ、絵本の中の出来事をすべて受け止めようとしています。その姿をみていると、絵本は子供たちにとっていろいろなことを体験できる最高の場所だと思わざるをえません。子どもたちがその絵本を気に入って何度でも読みたがるのも、まるで大好きな場所で大好きな友達とずっと遊んでいたいというような気持ちと重なります。そしてそれらの絵本の体験は子どもたちの心の糧となり、支えになっていくのでしょう。

 絵本は子供たちの身も心も楽しませる力を持っています。これは絵本のすごい魅力の一つだと思います。絵本の中に入り込んで主人公に寄り添い、自由に遊ぶ・・・それは子ども時代だけの特権のように思えます。そして夢中になって絵本を楽しむ子供たちの様子を見られるのが大人たちにとっての絵本の魅力の一つになるでしょう。