はるがきた

 暖かくなってきました。春はすぐそこですね。そんな時季におすすめの絵本を紹介します。 
 舞台はなかなか春が来てくれない町。みんなは暗く沈んだ気持ちで春を待ちわびていました。すると1人の男の子が「僕たちで町を春にしよう」と提案します。
 みんなはたちまち笑顔になり、ペンキ、はけ、はしごを持って町の至る所に春らしい絵を描いていきました。ビルの壁面にはヒナギクやタンポポ、小川、湖を描きました。お店や船着き場、桟橋にも花や緑をどんどん描いていきます。町は何もかもが生まれ変わったかのように明るく輝き出しました。
 けれどもその晩、激しい雨が降り、絵がすべて流されてしまいます。みんなさぞかしがっかりしたと思いきや…。
 春を迎える喜びとうれしさが詰まった絵本です。黄色と緑、青を基調とした絵からは、ぽかぽかとした暖かさが伝わり、春らしい陽気さを味わえます。
 読み終わったら今度は自分で春を探しに町へ繰り出したくなるかもしれません。皆さんも春の訪れをいっぱい楽しんでくださいね。

田丸 美穂( 秋田県子ども読書支援センター )

(令和5年3月25日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 ジーン・ジオン・文、マーガレット・ブロイ・グレアム・絵、こみやゆう・訳
出版社 主婦の友社