1ねん 1くみの 1にち

 4月になれば、入学式。新1年生はわくわくしてその日を待っていることでしょう。今回紹介する絵本は、いうならば小学生の観察日記。実際の小学1年生のクラスを定点カメラで撮影したものです。一足先に学校生活をのぞいてみませんか? 
 朝、ガランとした教室に生徒が次々と登校してくると、クラスの1日が始まります。一番乗りを喜ぶ子や宿題を忘れて焦る子、クラスメートが捕まえてきた虫に群がる子など、ほのぼのとした日常が繰り広げられます。
 朝の会から下校まで、授業中だけでなく休み時間に遊ぶ様子もばっちり観察しています。みんなの会話や心の声が吹き出しに書かれているので、自分もクラスの一員になった気持ちでツッコミを入れたくなります。
 さらに、人けのない放課後の校内を探検したりランドセルの中身をのぞいたり…。おいしそうな給食メニューも大公開。 
 現役小学生はもちろん、はるか昔に卒業した大人も、この絵本を挟んで自分の小学校について語り合ってみてください。

髙橋 里后( 秋田市立中央図書館明徳館 )

(令和5年3月18日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 川島敏生・写真・文
出版社 アリス館