でんしゃ くるかな?

 表紙には、笑顔の男の子とライオンやゾウなどの動物たち。みんなで一緒に座って、とっても仲良しです。そのみんなが待っているのが電車です。「くるかな? くるかな?」と、きょろきょろそわそわしています。 
 ページをめくると、待ちに待った電車がやってきました。赤い電車です。みんなは万歳して大喜び。ニコニコしながら、「ばいばーい」と手を振って電車を見送ります。 
 今度は青い電車がやってきました。みんな足を上げて大喜び。前のめりでニコニコしながら電車に「ばいばーい」します。
 また電車を待ちます。最後に来たのは黄色い電車。みんなは跳び上がって大喜び。手をつないで仲良く電車に乗り込みます。そして出発する電車の中から「ばいばーい」と手を振ってくれます。
 電車に会える喜びに満ちあふれた絵本です。ゆるやかかつ躍動感のある絵も喜びを倍増させてくれます。
 わかりやすいので、赤ちゃんから楽しんでもらえます。いろいろな色や動物たちも登場するので親子の会話も弾みそう。ぜひ男の子や動物たちと一緒に電車に会える喜びを味わってみてくださいね。

 

田丸 美穂( 秋田県子ども読書支援センター )

(令和5年3月11日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 赤ちゃんから(0歳~ )
作者名等 きくちちき・作
出版社 福音館書店