ねえ、どれがいい?

 ずっと前から、読み聞かせの定番中の定番。誰に読んでも喜ばれる魔法の一冊です。さまざまな選択肢からどれがいいかひたすら選ぶ絵本で、お子さんたちはたちまち夢中になります。
 ジャムまみれと泥だらけと水浸しなら、どれがいいかしら。1万円で死んだカエルを飲み込むか、2万円でお化け屋敷に泊まるか、それはもう大問題です。妖精の魔法、サンタクロースのプレゼント配りのお手伝いといった魅力的な選択肢が並ぶページもあります。
 「どれがいい?」を楽しんだ後で、選んだ理由を聞いてみるのもいいですね。以前、父さんが学校で踊るか、母さんが喫茶店で怒鳴るかを選ぶ質問で、「父さん」を選んだ子が理由を教えてくれました。母さんが怒鳴っている時、周りの人はむっとしているけれど、父さんが踊っている時はみんな笑顔だから、だそうです。お子さんの素直な気持ちを発見するチャンスになるかもしれません。
 大人も一緒に真剣に答えを選んだら、今まで知らなかった自分の本当の気持ちに気づいて、くすぐったくなったり、うれしくなったりするでしょう。お子さんと一緒に、どこまでも続く質問を楽しんでください。

 遠藤 美弥子( おはなしの会「おはなしの扉」 )

(令和5年2月25日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 ジョン・バーニンガム・作/まつかわまゆみ・訳
出版社 評論社