たべものだーれ?

 個人的なことで恐縮ですが、この絵本の作者・よねづゆうすけさんのことは以前から文房具やカレンダーなどのイラストで知っていました。温かい手触りが感じられるクレヨン画のファンになり、グッズをいくつも集めています。今回は、シンプルでありながらポップで楽しい、よねづさんらしい仕掛け絵本を紹介します。
 絵本は筆描きのタッチで、子どもたちの大好きな食べ物と動物が登場します。「かくれんぼしてるの だーれ?」という問いかけとともにトウモロコシやパン、カボチャなどが描かれたページをめくると、思いもしない動物が現れます。当てっこ遊びで読み聞かせが盛り上がること間違いなしです。
 厚紙で作られた丈夫なボードブックは、幼児が自分の手の中で思う存分ひっぱったりめくったりを楽しむことができるサイズです。仕掛け絵はわざとらしさがなく、どんな動物が隠れているか、大人でも当てるのが難しいようなページもあります。ぜひ親子で繰り返し読んで楽しんでください。

 髙橋 里后( 秋田市立中央図書館明徳館 )

(令和5年2月18日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 赤ちゃんから(0歳~ )
作者名等 よねづゆうすけ・作
出版社 講談社