ねんどろん

 真っ白い雪が降る中、白い息を吐きながら雪寄せする日々。暦の上では春ですが、水墨画のような世界はもう少し続きそうですね。今回は春に思いをはせながら、色鮮やかで躍動感あふれる絵本をご紹介します。
 「ずんずん ちゃ ずんずん ぱ ずんずん ちゃ ずんずん ぱ」リズミカルな音に合わせて登場してきたのは「ねんどろん」。四角、三角、丸の形をした、色鮮やかな粘土のようなねんどろんたちが、リズムに乗って形を変えながら歩きます。
 「ぴたぴた ぎゅ ずんずん ぎゅ」とくっつきあったり、「ころころ ねん ころころ どろん」とボール形になって転がったりとなんだかとっても楽しそう。自動車や飛行機、船にも変身! 仲間と一緒に変化し続けるねんどろんたちのめんこい表情から目が離せません。
 赤ちゃんの色彩感覚は誕生後に急速に発達するといわれており、この絵本は乳幼児にピッタリ。また、音や言葉を繰り返し口ずさむと、自然と心躍るリズムが生まれてくるので、歌やリズム遊びに興味が出てくる年齢のお子さんにもおすすめです。
 さあ、大人の皆さんもご一緒に! リズムに乗って感じるまま、思いのままに「ねんねんどろん ねんどろん♪」

 髙橋 寛光( あきたパパ絵本チーム「パパコラボ」 )

(令和5年2月11日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 赤ちゃんから(0歳~ )
作者名等 荒井良二・著
出版社 講談社