ままです すきです すてきです

 暦の上ではもう春ですね。節分は終わりましたが、この本には子どもたちが好きな「鬼」が出てきますよ。本のタイトルからは想像できない不思議な世界に引き込まれていきます。
 絵とともに「たぬき、きつね、ねこ…」と言葉がつながり、奇妙なしりとりになっています。ページいっぱいにいろいろなものが描かれていて、言葉の意味が分からない小さいお子さんでも見入ってしまうことでしょう。
 ページごとに読むテンポや声のトーンを変えると子どもたちは喜びます。まだ字が読めないお子さんでも、繰り返し読んでもらっているうちに暗唱したり、身ぶり手ぶりで登場するもののまねをしたりします。今では見られなくなった蓄音機が出てくるなど、新鮮さもあるかもしれません。
 子どもたちがこの絵本に引きつけられる最大の理由は…やっぱり「鬼」が主人公だからです。鬼が人間のように暮らしてる様子が面白いのだと思います。子どもにとって怖いイメージを抱かれることが多い鬼が、この絵本をきっかけに何だかユニークで身近な存在に思えたら楽しいですね!

 佐竹 美緒( 秋田市河辺保育所 )

(令和5年2月4日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 3歳ぐらいから
作者名等 谷川俊太郎・文 /タイガー立石・絵
出版社 福音館書店