このゆきだるま だーれ?

 外では木々や草花、お家の屋根にも雪がどっさり積もっています。その様子を窓から見つめる「もみちゃん」の笑顔が、ワクワクするお話の始まりを感じさせます。
 もみちゃんは黄色いマフラー、帽子、手袋、長靴に身を包み、大好きな赤いそりを持って坂すべりに出かけます。森の動物たちが「いいな いいな」とやってきたので、みんなでそりをひっぱり坂道を上ります。いよいよ坂すべり。赤いそりにぎゅうぎゅう詰めで出発です。
 そりは「しゅるるる しゅうっ!」と臨場感たっぷりに滑ります。ぐんぐんスピードに乗っていたところで動物たちにハプニングが起きます。みんなの愉快な転がり方に、読み手は大笑いかもしれません。
 雪に埋もれた動物たちはどこへ行ったのでしょう? そこに見たことのない雪だるまたちが登場します。それぞれ誰なのか、あてっこするのも楽しいです。
 「きっとまたあそぼ」というみんなの願いが心に響きます。寒い冬に心を温めてくれる、贈り物のような絵本です。

 仁村 由美子( 聖霊女子短期大学付属幼稚園・保育園 ) 

(令和5年1月21日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 3歳ぐらいから
作者名等 岸田衿子・文 /山脇百合子・絵
出版社 福音館書店