くまさんくまさんなにみてるの?

「くまさん くまさん、ちゃいろい くまさん、なに みてるの?」。そう聞かれたくまさんの視線の先には、赤い鳥がいました。赤い鳥にも「なに みてるの?」と聞くと、視線の先には黄色いアヒルが。ページをめくるたびに次々と続いていく動物のリレー。最後に登場するのはどんな動物でしょうか?
 この作品は、「はらぺこあおむし」で知られ、昨年惜しまれながらこの世を去ったエリック・カールさんの絵本作家デビュー作です。
 指や筆で色をつけた薄紙を切り抜いて貼りつけるコラージュの手法で描かれた作品が特徴です。鮮やかな色彩感覚から「絵本の魔術師」と言われています。
 この絵本でもページいっぱい鮮やかに描かれた動物たちに目を奪われてしまいます。問いかけや答えがリズミカルで子どもが聞きやすいので、まだ動物をよく知らないお子さんの絵本デビューにもってこいの作品ではないでしょうか?
 この絵本を見本にお子さんと一緒に絵を描いてみたり、出てきた動物の鳴き声や特徴でクイズをしてみたりしても面白いかもしれません。ぜひ繰り返し読んで、いろいろな遊びに発展させてみてください!

 林 一輝( NPO法人ファザーリング・ジャパン東北 )

(令和4年12月24日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 赤ちゃんから(0歳~ )
作者名等 ビル・マーチン・文、エリック・カール・絵
出版社 偕成社