雪のおしろへいったウッレ

 主人公の男の子ウッレにとって、待ちに待った雪の季節になりました。丸二日間降り続いた雪は、辺り一面に積もっています。ウッレは、新しいスキーを履いて早速森へと出かけました。
 森の中でウッレが出会ったのは、白く輝くおじいさん。おじいさんは、息を吹きかけたものを白くきらきらと光らせる霜じいさんでした。霜じいさんは、雪や霜をとかしながら歩いていた雪どけばあさんを追い払うと、ウッレを冬王様のお城へ案内します。
 雪のお城の門番はシロクマ、冬王様が座る氷の玉座の両脇に控えているのはセイウチです。お城の中では、たくさんの人たちが熱心にスキーやスケートの道具を作っています。スケート靴の金具を作っていた男の子が、お城で作られているものは子どもたちへのクリスマスプレゼントなのだということを教えてくれました。ウッレはお城のたくさんの子どもたちと一緒に、スキーやスケート、雪遊びに夢中になります。
 ひんやりと澄んだ空気を感じられるような美しい絵と、訳者によって厳選された言葉が、物語の雰囲気にぴったりです。北欧の幻想的な世界を味わうことのできるクリスマス絵本です。

 伊藤 麻衣子( 横手市職員・司書 )

(令和4年12月17日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 エルサ・ベスコフ・作・絵、石井登志子・訳
出版社 徳間書店