フルーツめしあがれ

 旬の果物のおいしさに勝るものはないですよね。この絵本は誰もが知っているフルーツが出てきて、赤ちゃんから4、5歳のお子さんまで楽しめます。
 表紙に描かれたイチゴは写真のよう。絵にフルーツの香りや甘さ、みずみずしさなどが詰まっています。水彩絵の具の柔らかな風合いは大人が見ても心引かれる一冊です。
 離乳食が始まった赤ちゃんに「これ食べたね」と話しかけながら読むと、絵本に手を伸ばしたり、口をモグモグと動かしたりするかもしれません。五・七・五のリズムでそれぞれのフルーツを表現していて、耳に心地良いです。言葉が話せる年齢のお子さんはまねて話す楽しみ方もできそうですね。
 それぞれのフルーツに合わせた背景の組み合わせも見どころ。文字が読めなくても絵を見て食べるまねをして、最後はおなかいっぱい、幸せな気分になれます。
 「めしあがれ」シリーズとして出版されている中の一冊です。本物に触れさせたい方はこの作品から手にとってはどうでしょうか。クリスマスプレゼントとしてもおすすめしたい絵本です。

 佐竹 美緒( 秋田市河辺保育所 ) 

(令和4年12月3日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 赤ちゃんから(0歳~ )
作者名等 視覚デザイン研究所・さく 高原美和・え
出版社 視覚デザイン研究所