時計つくりのジョニー

 
 この絵本は、物を作ることに興味あるお子さんたちに大変人気があります。あるお子さんにせがまれて、2日間で合わせて15回ほどこの本を読んであげたことがあります。
 ジョニーは金づちやノコギリで物を作るのが上手でしたが、お父さんとお母さんは息子の器用さに全く気づかず、彼が何か作り始めると「ばかなことをやっている」と怒るのです。
 ある日ジョニーは自分だけで大時計を作ろうと思いつきました。しかし、お父さんとお母さんは「くだらんことを」と言い、学校のみんなにもいじめられます。それでもスザンナという女の子の応援もあり、ジョニーは頑張ります。
 あらゆる困難を一つ一つ解決しながら、大時計を作るジョニー。応援する人が増え、ついには大時計が完成します。お父さんも大時計に感心し、ジョニーにいろいろな道具を贈ってくれました。
 個性を伸ばしたい、と願うものの、子どもの本当の好きなものに気づかないことはよくあります。ジョニーには応援してくれる人がいました。応援することで誰かの才能が花開いたら、とてもすてきなことですね。



 遠藤 美弥子( おはなしの会「おはなしの扉」 ) 

(令和4年11月19日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 エドワード・アーディゾーニ・作 あべきみこ・訳
出版社 こぐま社