はじめに大きなかぼちゃが1個登場します。ページをめくるとかぼちゃは3個になります。イラストに合わせて「いっこ、さんこ」という言葉が何度か繰り返された後に、描かれるものの数の法則が変わり、「いっこ、いっこ」になったり、「さんこ、さんこ、いっこ、さんこ」になったりします。絵本に出てくる言葉は「いっこ」と「さんこ」だけですが、韻を踏むことでリズム感が出て、歌うような楽しさが生まれます。
赤ちゃん向けの絵本は、食べ物や乗り物など分かりやすいテーマが多いものです。でも、この絵本で描かれるものは少し変わっています。かぼちゃの次に出てくるものは、一見ブタのようですが、背中の太い線はコインの投入口に見えます。「いっこ」と数えられるそれは、ブタの形の貯金箱なのでしょう。
もちろん、イチゴや積み木など定番のものも描かれていますが、それらと同じように、ひもの結び目や木の端材も「いっこ」「さんこ」と数えられています。
「1」と「3」という「数」を、リズミカルな「音」としても認識させる力。一貫性のないものにも自然に親しませる力。読んでもらっている子どもの笑顔を思うと、改めて絵本が持つ可能性の大きさを感じます。
伊藤 麻衣子( 横手市職員・司書 )
(令和4年11月12日秋田魁新報掲載)
対象年齢 | 赤ちゃんから(0歳~ ) |
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作者名等 | 及川賢治・竹内繭子・作 |
出版社 | 文溪堂 |