たべものやさん しりとりたいかい かいさいします

 
 ワクワクする題名と笑顔の食べ物たちが楽しそうな、ことば遊び絵本です。食べ物を擬人化した独創的なタッチのイラストと緻密なしりとりの展開、ことばのセンスが光ります。
 しりとり大会にエントリーしたのは、おすし屋さん、パン屋さん、ケーキ屋さん、ラーメン屋さん、レストラン、果物屋さん、八百屋さん。それぞれのお店の食べ物たちは気合十分です。なぜなら、優勝のプレゼントは「なんでもほしいもの」ですから。
 最初は「あ」から始まり、ケーキ屋さんの「アップルパイ」が登場。次はおすし屋さんの「いくら」。その次にラーメン屋さんの「ラーメン」が出てきましたが、「ピピピピー!」。審判員のアウトコールです。
 しりとりのルールは、ことばの最後の文字が頭文字になる別のことばをつなぎ、「ん」がついたらアウト。帰って行く「ん」のつく食べ物たちの落ち込んだ表情が切ないだけでなく、波乱も起きます。
 最後に優勝するお店は…見てのお楽しみです。見事な伏線回収と、優勝プレゼントに拍手喝采!



 仁村 由美子( 聖霊女子短期大学付属幼稚園・保育園 )

(令和4年11月5日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 シゲタサヤカ・作
出版社 白泉社