万次郎さんとおにぎり

 
 実り豊かな秋になりました。万次郎さんの田んぼは今年も豊作です。収穫したお米で、万次郎さんはおにぎりを10個作りました。
 順番にのりを巻いていきますが、1個分ののりが足りません。万次郎さんが探していると、のりが巻かれた9個のおにぎりたちが「ああ、もう、まてねえぞう」と次々に転がり、万次郎さんの家を飛び出します。
 のりがまだ巻かれていないおにぎりは「いやじゃ、いやじゃ、はだかは いやじゃ」と、台の上をころころ転がり、散らばっているのりのかけらをくっつけて後を追います。「おてんとさまあ、いま いきますけん、まっていてくだされえ」。おにぎりたちは、おてんとさまの元へ向かっているようです。
 この絵本は、2歳ごろから楽しむことができる幼児絵本シリーズの一冊です。万次郎さんとおにぎりたちの表情がユーモラスで、温かな雰囲気です。描かれているのは、収穫したものを料理することと、味わうこと。シンプルなストーリーだからこそ、自然の恵みに対する感謝の気持ちがまっすぐに伝わってきます。食べ物について考える第一歩になると思います。

 伊藤 麻衣子( 横手市職員・司書 )

(令和4年10月8日秋田魁新報掲載)

 

2022あふれちゃんのえほんばこへ進む

有名なグリムの昔話です。母やぎが森へ食べ物を探しにいくあいだ留守番をすることになった七ひきのこやぎ。母やぎからは狼に気をつけるようにいわれます。狼の見分け方はしわがれ声と足が黒いことです。
 まもなくやってきた狼は、こやぎたちが声や足で狼を見分けると知ると、白墨で声を綺麗にし、ねりこと粉で足を白くしてきます。そしてだまして戸を開けさせ、こやぎたちを次々に飲み込んでいってしまいます。助かったのは時計の箱にかくれていた一番末のこやぎだけでした。
 母やぎの悲しみは計り知れません。けれども狼のお腹の中で生きていることがわかると、こやぎたちを助けるためにすばやく動きます。
 この絵本の最後では悪い狼が死に、それをみたこやぎたちが「おおかみしんだ」と叫び、母やぎと一緒に踊りまわります。いっけん残酷に思われるような終わり方です。
 けれども、こやぎたちに気持ちを寄せてお話を聞く小さな子にとって、悪い狼の死は恐怖から解放、叫び声は安心した喜びの声に感じるのではないでしょうか。母やぎのこやぎたちへの愛情や親としての強さ頼もしさもしっかりと伝わってきます。
 繊細で美しい絵と、優しく語り掛けるような丁寧な訳が特徴の長く読み継がれてきた絵本です。
対象年齢 3歳ぐらいから
作者名等 本田いづみ・ぶん/北村人・え
出版社 福音館書店