先週のこのコーナーでは、おおかみと7匹のこやぎたちが息詰まる攻防を繰り広げる絵本を紹介しました。今回紹介するのは、悪役のおおかみが主人公の、ちょっと現代風なお話です。
童話絵本でのおおかみは、こやぎや赤ずきんによっておなかに石を詰め込まれたり、3匹のこぶたに大きな鍋で煮て食われたりする運命。この本の主人公のおおかみは「こわいのはやつらのほうだ」と思いながらも、おなかがすくのはどうしようもないので、絵本を片手に狩りに出かけることにします。
ところが留守番中のこやぎたちは、はさみを手に元気いっぱい。赤ずきんはなかなか寄り道してくれず、その間に3匹のこぶたは立派なれんがの家を建てていました。おおかみを恐れない彼らを相手に、狩りは全く成功しません。
目線が変わると、こやぎや赤ずきんよりも、慎重で生真面目な性格のおおかみを応援したくなってきます。自然界は食うか食われるかの世界。どちらか一方が悪役なんてことはないんです。この一冊が、物事をいろいろな面から見るきっかけになるといいですね。
髙橋里后( 秋田市立中央図書館明徳館 )
(令和4年9月24日秋田魁新報掲載)
対象年齢 | 5歳ぐらいから |
---|---|
作者名等 | 重森千佳・作 |
出版社 | フレーベル館 |