花火大会の季節ですね。数年ぶりの開催を待ちわびていた人なら、この絵本に登場する動物たちの気持ちがきっとわかるはずです。
今日は江戸の町に花火が上がる日。タヌキの「ぽんきち」は花火職人のお父ちゃんに夜食を届けるよう、お母ちゃんに頼まれました。うきうきと出かけるその姿を見た町の人々は、「もう花火の時間かい?」と、明るいうちから仕事や用事を放り出して彼を追いかけます。
長屋のおかみさんたちに始まり、髪結い、寺子屋のお師匠さん、岡っ引きや湯屋のお客さんたちまで…。見物の行列はどんどんのびて、ついに町じゅうの人を引き連れてやってきた息子にビックリのお父ちゃん。
みんなのはやる気持ちを知ってか知らずか、寄り道しながら歩くマイペースなぽんきちの背景には、江戸時代の町の様子や暮らしぶりが描かれています。現代と同じ職業でも呼び方が違うので、「これは何をしているところ?」などと、ストーリー以外でも会話が弾みそうです。
近くで見る打ち上げ花火はやはり迫力が格別です。近所の花火大会にも、ぽんきちが来ているかもしれません。私も見失わないように、後を追いかけたいです。
髙橋 里后( 秋田市立中央図書館明徳館 )
(令和4年8月20日秋田魁新報掲載)
対象年齢 | 5歳ぐらいから |
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作者名等 | たしろ ちさと・作 |
出版社 | 佼正出版社 |