くまの子ウーフのおはなし(1)さかなにはなぜしたがない

  50年以上前に誕生した「くまの子ウーフ」。このほど、再編集された新シリーズが刊行されました。文字が大きくて読みやすく、カラー挿絵も楽しい新シリーズですが、愛らしいウーフのキャラクターはそのまま。本書はその中の一冊です。
 表題作は、いろいろなものになれたらいいな、と空想するウーフのお話です。魚をうらやむウーフは、フナが教えてくれた魚の秘密に驚きの連続です。さて、それでもウーフは魚になりたいと願うのでしょうか。
 一緒に収録されている「ぶつぶついうの だあれ」もおもしろいです。泥だらけになったウーフと、彼を迎えるお母さんの、ユーモアと愛情たっぷりのやりとりに、きっと笑顔があふれることでしょう。
 ウーフの魅力は、子どもらしさがギュッと詰まっているところ。うれしそうに食べて遊んで甘えている様子は、人間の子どもと一緒です。大人にとっては当たり前になってしまったことを不思議に感じたり、思いもよらないことを考えついたりするところは、子どもらしさの象徴であるとともに、物語を味わい深く豊かなものにしています。

 伊藤 麻衣子( 横手市職員・司書 )

(令和4年6月25日秋田魁新報掲載)

 

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対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 神沢 利子・作/井上 洋介・絵
出版社 ポプラ社