おおきなけやき

 外に出る機会が減っている昨今ですが、今回は森の中の木がかなり近くに感じられる一冊を紹介します。
 この冬、最後の寒さがやってきた日。森で一番背が高く、一番年寄りのケヤキの木が「どっすーん!」と倒れてしまいました。「そらがあんなにとおくにあるぞ。わしももうおしまいだ」とケヤキはつぶやきました。
 春になり、倒れたケヤキのそばで育った小さなブナは、ケヤキのように大きくなって遠くの景色を見るのが夢だと語ります。ケヤキの枝から青空へ飛び立つのが好きだった、と話すキジバトも。森でとても尊敬されていたケヤキに、たくさんの動物が言葉を掛けていきました。
 その後、何度となく春が訪れ、倒れたケヤキを包み込むように草花が育ちました。ケヤキはたくさんの草花を毎日眺め、高いところを見るのと同じくらい、土の上も素晴らしいところだったことに気付きます。
 この絵本ではケヤキの木の一生を通して、森の季節の移り変わりや森にすむ動物や植物を知ることができます。出版社によると、残念ながら品切れで重版未定とのこと。でも、図書館で読むことができます。とても長い気がするこの冬ですが、そろそろ春の訪れが感じられる頃。新しい芽吹きも近くにあるかもしれませんよ。

千葉 智晴( 木育パパサークル「あきた木木遊び隊」 )

(令和4年2月19日秋田魁新報掲載)

 

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対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 林 木林・作 広野 多珂子・絵
出版社 鈴木出版