なまはげ

 テレビの某番組で、あるタレントさんが「日本のなまはげって子どもを脅すだけですものね」と言いました。え? まさかまさか、なまはげは神様です。
 でも、ちゃんと知らない人は意外と多いのです。なまはげとは、何でしょう。それがよく分かるのがこの絵本です。
 臨場感あふれる写真絵本なので、自分もなまはげ行事に参加しているような気持ちになります。
 なまはげは、村の家にどかどかと入り込み、まず第一声は「泣く子はいねが」ではなく、「おめでとう」と新年のご挨拶です。それから四股を踏んで、家を清めます。なまはげは、家の人と親しく言葉を交わし、来年の豊作を約束し、人々を活気づけます。
 男鹿の厳しい自然の中で、子どもたちが健やかに育つのも、稲がすくすく伸びるのも、大人たちのたゆみない努力があってこそです。なまはげは、その大人たちの、「育てる力」を応援するために、夜の一番長い、吹雪の一番激しい季節に、深い山の奥からおりてきて、大丈夫だよ、と励ましてくれるのです。
 家の中まで入って暴れるなまはげは、目の前の災いに負けず、再び立ち上がる、その鍛錬をさせてくれるかのようです。なまはげは、村を見守る強くて大きな神様なのです。

 

遠藤 美弥子( おはなしの会「おはなしの扉」 )

(令和4年1月29日秋田魁新報掲載)

 

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対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 小賀野 実・写真・文 
出版社 ポプラ社