トラのじゅうたんになりたかったトラ

 寅年にトラのお話です。トラというと、強くてかっこいいイメージでしょうか。けれど、この絵本に出てくるトラは少し違っています。表紙のトラはおなかを上にして転がり、かっと目を開いて赤い舌を出しています。なぜこんな姿なのでしょう? 
 昔、インドのジャングルに、年を取ってやせこけたトラがすんでいました。トラが宮殿の窓から中をのぞくと、王さまと家族がおいしそうなごはんを食べています。いいなあ、仲間に入りたいなあとうらやましくなりました。
 そこで、トラはじゅうたんになりすまして宮殿にもぐり込みます。ほこりを払うためにパンパンたたかれたり、ごしごし洗われたりと大変ですが、我慢します。王さまの食事の後、誰もいなくなった部屋で残ったごちそうをゆっくりいただきます。そうしているうちにだんだん毛並みがよくなって体はふっくらしてきました。まずい、正体がばれちゃうよ。
 そんなある日、お城に泥棒が入りました。王さまが危ない!
 さあ、トラはどうするでしょうか。鮮やかな色で描かれるジャングルや宮殿、必死にじゅうたんになりすますトラの表情にもご注目ください。

 

松橋 桜( 秋田市立中央図書館明徳館文庫 )

(令和4年1月8日秋田魁新報掲載)

 

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対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 ジェラルド・ローズ・文・絵 ふしみ みさを・訳
出版社 岩波書店