こぶたがいました。お百姓のおじさんとおばさんにかわいがられ、幸せにくらしていました。一番好きなことは、やわらかい泥んこに座ったまま沈んでいくことでした。
ある日、おばさんが大掃除を始めます。大きな掃除機で家の中のほか、牛や鶏の小屋まできれいにして、こぶたの大好きなやわらかい泥んこも吸い込んでしまいます。
怒ったこぶたは家出して泥んこを探します。沼やごみ置き場を探し、ついに見つけたと思ったのは、やわらかいセメント。座って沈んでいたら、大変、セメントが固まり始めました。町中の人が、セメント漬けのこぶたを見に来ますが、誰も助けてくれません。こぶたはどうなってしまうのでしょうか。
大人は時々、子どもの一番大事なものが分からなくなります。子どもが一番大好きなものを捨てたり、片付けたりしたことはありませんか?子どもとの一番大事な約束を、軽い気持ちでまた今度ねと破ったことは?そういえば、と心痛む方は、ぜひこの本を読んであげてください。本当はこうしたかったんだよ、という大人の気持ち、きっと伝わると思います。ちなみに作者のローベルさんは、とてもお掃除好きだったそうですよ。
遠藤 美弥子( おはなしの会「おはなしの扉」 )
(令和3年8月28日秋田魁新報掲載)
対象年齢 | 5歳ぐらいから |
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作者名等 | アーノルド・ローベル/作 岸田衿子/訳 |
出版社 | 文化出版局 |