トマトさん

 そこは小川のそばのトマト畑。大きなトマトさんが「トマトのき」から「どった」と落ちてしまいました。暑い夏の昼下がり、ミニトマトたちはみんな、「こんなにあつくちゃひからびちまう」と、小川にダイビング。「ぷかぷかおよぐのなんか、みっともないでしょ」と強がっていたトマトさんも、あまりの暑さに泣きだしてしまいます。
 本当は泳ぎたかったんだと知った虫たちが、トマトさんを転がそうと頑張りますが、びくともしません。だってこのトマトさんは、とっても大きくてとっても重いのですから!
 トマトさんは、小川で泳ぐことができるのでしょうか?それともこのまま、畑でカピカピにひからびてしまうのかしら。ぜひ読んでみてくださいね!
 それにしても、絵本に出てくるトマトさん、どことなくふてぶてしくて、少し色っぽくて、けだるい感じです。まつ毛が長いのも特徴的。絵本をめくるたび、トマトさんの表情から目が離せなくなってしまいます。
 暑い日差しとトマトのむせかえるような匂いが感じられる、夏にお薦めの一冊です。

 石坂 千雪( 鹿角市児童センター・子ども未来センター )

(令和3年7月31日秋田魁新報掲載)

 

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対象年齢 3歳ぐらいから
作者名等 田中清代・作 
出版社 福音館書店