いろいろはっぱ

 表紙と裏表紙をまたいだ大きなホオノキの葉の写真が圧巻です。登場する葉のほとんどが実物大になっている写真絵本です。緑の濃淡や個性的で美しい葉脈、大きさや形、厚さ、感触の違いを味わえます。
 白い背景に、丸や三角、四角、ハート形の葉っぱが鮮やかに浮かび上がり、それぞれのフォルムの美しさが際立ちます。半分ほど読み進めていくと、どどーんと森の風景がでてきます。今までなら「わぁ、緑がいっぱい」と見ていた風景ですが、不思議に葉の形に目が行きます。もっと見つめていると、形や色、枝の葉っぱのつき方や並び方の違いに気づき、わくわくしてきます。
 さらに、何かの形に似ている葉や、穴だらけの葉も登場。「どうして?」「誰が穴をあけたの?」と想像をかきたてられます。終盤では緑から黄、赤へと変化していくモミジなどの葉がやがて茶色い枯れ葉になり、枯れ枝や木の実と一緒に次の小さな生命の誕生を待っているところで終わります。
 登場する葉には全部名前がありました。森の不思議や周辺に暮らす生き物たちの様子にも興味を広げ、親子で自然をたっぷり味わってみませんか。散策のお供にもいかがでしょう。

 仁村 由美子( 聖霊女子短期大学付属幼稚園・保育園 )

(令和3年6月5日秋田魁新報掲載)

 

2021あふれちゃんのえほんばこへ進む

対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 小寺 卓矢/写真・文
出版社 アリス館