あいうえおうさま

 絵本の表紙は、主人公の愉快な鼻ひげ王様がピカピカの王冠をつけて読む人をお出迎えしているようです。
 この絵本の特徴は、何といっても言葉遊びの面白さ。五十音の1音ずつを頭文字に、かるたのような文が並んでいます。「あ」のページは、「あいうえおうさま、あさのあいさつ、あくびをあんぐり、ああおはよう」といった具合です。軽やかなリズムなので、読みながら思わず文が口をつき、繰り返し声に出だして楽しんでしまいます。
 1文字ずつ繰り広げられる言葉の世界が、おかしくって、楽しくって、ナンセンスもあり、ワクワクにあふれています。言葉の選び方、つなぎ方、語彙の豊かさに作り手の素敵な感性を感じます。
 王様のおっちょこちょいで、いたずら好きで、お茶目な人柄が伝わってくる不思議な魅力もあります。黒い縁取りのタッチと、カラフルな色合い。見る者に強い印象を残すこの「絵力」が、魅力をつくり出しているのだと思います。
 どのページにも表情を変えて登場する王様を見て、くすっと笑ったり、しんみりしたりと、心動かし楽しんでほしいです。
 あいうえお・し・ま・い。

(令和3年2月28日秋田魁新報掲載)

 仁村 由美子( 聖園女子短期大学付属幼稚園・保育園 )

 

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対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 寺村輝夫/文  和歌山静子/絵  杉浦範茂/デザイン 
出版社 理論社