こぶじいさま

 先日、鬼は外、と豆まきをしたおうちも多かったでしょう。さて、今回ご紹介するのは意外にも鬼と楽しいひとときを過ごしたおじいさんのお話です。
 昔々、額に大きなこぶのあるじいさまがいました。ある日、山へ木を切りに行き、日が暮れたのでお堂に泊まることにしました。すると真夜中、鬼たちが現れて歌い踊り始めます。こぶじいさまはどうにも我慢できず、とうとう鬼たちの真ん中に飛び出して、歌い踊りました。鬼たちは喜び、「明日の晩も来いや」と言ってじいさまのこぶをはがして持っていきました。
 「こぶとりじいさん」という題名でも有名なこの昔話には、悪い人が登場しません。鬼もそうです。でも鬼の力は荒ぶる自然のように大きいもの。ですから鬼と人が交わると良くないことも起こります。豆まきは鬼の力がむやみに人の世界で爆発しないよう、「鬼は鬼の世界にお帰りください」という願いの表れかもしれませんね。だから、山奥から「くるみはぱっぱ」なんて歌声が聞こえる時は、決して近づかないてはいけませんよ。

(令和3年2月14日秋田魁新報掲載)

 遠藤 美弥子 ( おはなしの会「おはなしの扉」 )

 

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対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 松居直/再話 赤羽末吉/絵 
出版社 福音館書店