ももも すももも

 にっこり笑うカラフルな桃が表紙いっぱいに描かれているこのかわいらしい絵本が、まさか読み聞かせの最難関だなんて、誰が思うでしょう。なにしろ、早口言葉の絵本ですから。普通に読もうとしても、言い間違えるし、つっかえるし、これほど難しい本もありません。
 でも、小さいお子さんたちはきっと大喜びしてくれるはずです。自分ではまだ字を読めないくらいの、耳で言葉を聞くだけの年代ほど、さかさ言葉や、早口言葉、同じ言葉の繰り返しを喜びます。
 なぜ、言葉の音に子どもたちはこれほど敏感なのでしょうか。それは、人が読むことを覚えると同時に、聞く能力の一部を失ってしまうからだといいます。
 ですから、まだ自分では字を読めないけれど、言葉の音を楽しむ年齢の聞き手に、たくさんの言葉遊びの絵本を読んであげてください。
 この絵本では、古来から有名な、「生麦生米生卵」から、パンダやジョーズまで登場する新しいものまで、さまざまな早口言葉がポップでかわいい挿絵とともに登場します。
 一気に読んだり、一つ一つの音の響きを聞き手と確かめ合ったり、いろいろな読み方で、言葉の音を楽しんでください。

(令和2年9月6日秋田魁新報掲載)

 遠藤 美弥子 ( おはなしの会「おはなしの扉」 )

 

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対象年齢 3歳ぐらいから
作者名等 新井 洋行/作
出版社 講談社