のうさぎ

 今回紹介するのは野生のノウサギの絵本です。ウサギはふわふわしておとなしいので、動物園の触れ合いコーナーでも人気ですね。
 でも、体が小さくて牙などの武器を持たないノウサギが自然界で生き延びるのは、大変なことです。
 クマタカやキツネ、テンなどの天敵に狙われるので、いつも長い耳をぴんと立てて周囲を警戒し、敵のスピードに負けないダッシュで攻撃をかわします。ウサギの親は大きくて目立つので、昼間は決して巣穴に近づきません。その間、子ウサギは自分たちで危険を察知し、やり過ごすのです。ちいさなふわふわの体で、こんなにも厳しい暮らしをしているとは。
 動物画の第一人者・藪内正幸さんの細やかな線描からは、ノウサギの息づかいが聞こえてくるようです。自然の厳しさを伝える簡潔な文章は、旧六郷町(美郷町)出身の高橋喜平さんによるもの。高橋さんは雪崩の研究で有名ですが、ノウサギの生態も長く観察されました。
 しばらく品切れ状態だった作品ですが、昨年復刊しました。この機会にぜひ手に取ってみてください。
 

(令和2年4月5日秋田魁新報掲載)

 遠藤 美弥子 ( おはなしの会「おはなしの扉」 )

 

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対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 高橋 喜平/文 藪内 正幸/絵 
出版社 福音館書店