つららとは、家の軒下などから棒状に伸びた氷のこと。屋根に積もった雪が解け、水滴が垂れる時に冷たい空気にさらされると、再び凍ります。それを繰り返しながら、つららは下に向かって少しずつ伸びていきます。私が子どもの頃はつららで遊ぶのが冬の楽しみの一つでした。
つららには、春の訪れを感じさせてくれる一面もあります。雪が積もった冬のある日、女の子が部屋の中から、窓の外にあるつららにこう尋ねました。「つららさん 春は近いかどうか 教えてよ」。するとつららは「ぽーっとん ちーかい」と、滴の音で答えてくれたのです。でも外はまだ冷たい風が吹いています。本当に春は近いのでしょうか?
女の子の問い掛けに対する返事は、日ごとに変化していきます。「ぽっとん ぽっとん」と滴が落ちる間隔が短くなり、雪の下から湿った土が顔を出す頃には「ぽっととととととと」と勢いよく解けていきます。
滴の音はまるで、「春はすぐそこに来ているよ」というメッセージのようです。冬から春への移り変わりが優しく描かれています。
(令和2年3月1日秋田魁新報掲載)
田中 絵美( 秋田市立中央図書館明徳館文庫 )
対象年齢 | 3歳ぐらいから |
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作者名等 | 小野寺 悦子/文 藤枝 つう/絵 |
出版社 | 福音館書店 |