パパはわるものチャンピオン

 「カーン!」試合開始のゴングが鳴り響き、2人の大男が鍛え上げた肉体をぶつけ合います。そうです、ここはプロレスリング。
 チャンピオンが技を繰り出すと、客席は沸き立ちます。一方、悪役レスラー「ゴキブリマスク」にはブーイングの嵐。でも主人公の男の子は心の中で応援します。「がんばれ、ゴキブリマスク。がんばれ、パパ」。パパの仕事は正義の味方にやっつけられてしまう悪者なのです。
 反則技を使うゴキブリマスクに対し、観客が期待するのはチャンピオンの反撃。ですが、この日はゴキブリマスクが必殺技で相手を倒します。男の子は思わず跳び上がって喜びますが、周囲の人は「ひきょう者」「ずるいことするな」と怒って叫んでいます。男の子は複雑な気持ちになりました。うれしいけど、悪者が勝ってよかったの?
 浮かない顔の男の子に、試合後のパパが胸を張って言います。「正義の味方に勝って、ゴミを投げられる。それでいいんだ。」さすが、悪者のチャンピオン。仕事に誇りを持つ男の言葉です。格好いいですね。


 千葉 智晴(木育パパサークル「あきた木木遊び隊」)

(令和2年2月23日秋田魁新報掲載)

 

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対象年齢 5歳ぐらいから
作者名等 板橋 雅弘/作・吉田 尚令/絵
出版社 岩崎書店