クマよ

 アラスカを愛し、クマを愛した写真家の星野道夫さん。雄大な自然を生きるクマの、ありのままの姿を撮影した写真に心を揺さぶられます。子グマをおんぶする母グマの優しいまなざし、サケを狩るときの荒々しい動き、草原でばったり出くわした際の困ったような顔…息遣いが聞こえてくるようです。
 すぐ近くで生活していても、人とクマが仲良く一緒に暮らすことはできません。そのもどかしさや脅威を、星野さんは率直な言葉に表します。「おまえのからだにふれてみたいけれども おれとおまえははなれている はるかな星のように」「夜になるとすこしこわいんだ どこかに お前がいると思うだけで」
 一方で、クマの存在を感じながらテントでじっと耳を澄ましているときの、不思議な気持ちが好きだとも星野さんは言います。クマへ心を寄せ続けた星野さんは1996年、取材中にヒグマに襲われ急逝しました。最後の写真絵本となった本作には、生命への敬意が込められています。多くの子どもたちに、星野さんからのメッセージを受け取ってほしいです。
 

 石坂 千雪( 鹿角市児童センター・子ども未来センター )

(令和2年2月9日秋田魁新報掲載)

  

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対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 星野 道夫/文・写真
出版社 福音館書店