だいすき、でも、ひみつ

 私たちの足元でも、こんなすてきな物語が展開しているのでしょうか。舞台はなんと人間の「右足」。足の指たちによる恋のお話です。
 「おやゆび」は「こゆび」のことが好き。「ひとさしゆび」「なかゆび」「くすりゆび」に協力してもらい、思いを伝えます。告白は見事に成功。おやゆびとこゆびは付き合い始めますが、2人の間にはいつも他の指たちがいます。どうしても2人きりになることができません。
 「いちどでいいから、ふたりきりになりたい・・・」。おやゆびは駆け落ちを考えるほど思い詰めますが、実行できません。切ない思いがひしひしと伝わってきます。この恋の結末はどうなるのでしょう。
 足の指同士が恋に落ちるユニークな設定で、彼らの真剣な思いを応援したくなります。この絵本を読んでから、私は自分の右足を見るとお話を思い出し、くすっと笑ってしまいます。
 「私、○○君が好き」「俺○○の好きな人知ってるぞ」と、恋に興味を持ち始める年頃の子どもにぴったりの絵本です。大人が読んでも楽しく、久々に恋する気持ちを思い出しますよ。
 

 石坂 千雪( 鹿角市児童センター・子ども未来センター )

(令和元年11月17日秋田魁新報掲載)

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対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 二宮由紀子/文 村上康成/絵
出版社 文研出版