「やまのなかの ちいさな いえに おばあさんが ひとりで すんでいた」
こんな文章で物語は始まります。おばあさんはいつもパンを焼き、お気に入りのスプーンでスープを飲んでいました。おばあさんのスプーンは古いけれど、丁寧に磨かれてぴかぴか光っていました。
ある日、小川で洗っていたスプーンをうっかり落としてしまったおばあさん。そこにカラスが飛んで来て、スプーンをつかんで逃げると宝物にして巣の中に隠しました。
さて皆さん、スプーンはもう、おばあさんの手元に返ってこないと思いますか?実は、物語はここから思わぬ展開を見せます。
冬になり、大風が吹いたある日のこと。カラスが木の上に隠しておいたスプーンは、地面に積もった雪の上へ落ちました。そこへ3匹のネズミがやってきて、ぴかぴか光るスプーンを見つけます。
ネズミたちは興味津々。1匹が宙返りした拍子にスプーンに飛び乗ると、雪の上を滑り始めました。残る2匹も慌てて追いかけます。風を切って雪山を滑るスプーンのそりは、一体どこまで行くのでしょうか。
神沢さんの「はけたよはけたよ」(偕成社)も、パンツを履こうと努力する男の子を描いた楽しいお話でお勧めです。
金田昭三(児童文化研究家)
対象年齢 | 3歳ぐらいから |
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作者名等 | 神沢 利子/作 富山 妙子/絵 |
出版社 | 福音館書店 |