かさじぞう

 大みそか、かさが売れなかったおじいさんは、吹雪にさらされていたお地蔵さまたちを気の毒に思い、かさをかぶせてあげます。足りない分は自分のかさをかぶせて、おばあさんの待つ家に帰っていきます。すると、正月の明け方にどこからか、掛け声が聞こえてきます…
 長く語り継がれてきた昔話で、物語を知っている人も多いと思います。絵本も50年以上前から出版されて、たくさんの人たちに楽しまれています。
 墨で描かれた絵からは、昔の人の暮らしや湿った雪の冷たさ、身を切るような吹雪の寒さが伝わってきます。絵は丁寧につづられた表現力豊かな文章ともよく合い、家族とゆったりとした気持ちで読むことができます。
 昔話は地方の自然や風土に根差していて、その中で生きる人々の知恵や工夫が語られているといわれます。「かさじぞう」の世界も、雪国に住む私たちにとっては身近に感じる部分が多いのではないでしょうか。
 お地蔵さまはもちろんのこと、おじいさん、おばあさんの優しさや仲の良さにも心が和みます。幸せな気持ちで年越しできそうです

 皆さま、どうぞよいお年をお迎えください。
 (平成30年12月30日秋田魁新報掲載)

田丸美穂(県子ども読書支援センター)

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対象年齢 小学校低学年ぐらいから
作者名等 瀬田 貞二/再話 赤羽 末吉/画
出版社 福音館書店